金利の上限を定める「出資法」は、最高刑が懲役5年・罰金1000万円の刑事罰。誰とどんな内容の契約を結ぼうが自由なのが法の大原則だが、もともと、借金の暴利契約は、例外的に刑事罰で規制しなければならないほど悪質だと位置づけられてきたわけだ。この判決は、民事の面でも、ヤミ金融に対する裁判所の厳しい態度を明確にしたものだといえる。

本判決の結論を裏づける民法上の概念が「不法原因給付」と呼ばれるものである。たとえば愛人契約や殺人依頼契約など、法が認めない無効な契約によって金銭などが給付されたなら、裁判所を通じて強制的に取り戻しを請求することはできない。不法なことに関与した者を、裁判所は一切手助けしない、という意味だ。

この判決には「ヤミ金融からは『借り逃げ』し放題なのか」と懸念する声もある。しかし、最初から金を奪うつもりで借り入れを申し込めば、詐欺罪に該当するので心配はいらない。泥棒から物をとるのも、やはり泥棒であるのと同じようなもの。この最高裁判決は、あくまでヤミ金融の被害に困っている債務者の救済策なのである。

ヤミ金融に手を出す多重債務者が、年々増加の一途をたどっている。消費者金融に対する規制が強化されることによって、融資の審査も厳格になったからだ。消費者金融から融資を断られた債務者は、お金を貸してくれるヤミ金融に、涙を流して感謝することすらあるという。

高利貸しを撲滅するのなら、並行して、福祉施策を講じることも必要だ。そうでなければ、ますます生活困窮者を追いつめるだけである。この問題は、司法の英断だけでは解決に至らない面があることも忘れてはならない。

(ライヴ・アート= 図版作成)