問題解決には一世代、30年はかかる

では、空き家を相続する可能性がある人はどうすれば良いだろう。打つ手はあるのか。

「個人でできることは、早めに逃げる算段をする以外にはありません。国、自治体でなければ、空き家問題を根本的に解決することはできません。具体的には都市計画で捨てる地域を決め、住む地域と交換、街を縮小していく、各地の空き家バンクを利用して地方移住を促進する、などの方法が考えられますが、いずれも即効性はない。5年、10年では無理で、一世代30年はかかると思ったほうが良いですね」

当然、多くの人はそれ以前に相続を迎える。だとしたら、やるべきことは早期撤退への準備だろう。牧野氏が勧めるのは、親の資産の棚卸しだ。親の家は今、いくらなのか、家以外の財産はどのくらいあるのか。多くの人は親の家の価値など考えたことはないかもしれないが、まずはここからだ。

「私の知人の場合、お母さまと水入らずの旅行をする機会があり、そこで財産について、相続についての自分の意思を話してくれ、将来の相続に対し、心の準備ができたといいます。早いうちに互いの意識の違い、世代間ギャップをクリアにし、その上で何をどうするかを考えておく。親の財産の処分に兄弟姉妹や親族との相談が必要ならなおさらです」