共働き世帯は都心を選択する

「1997年に共働き世帯が専業主婦世帯を上回り、99年には男女雇用機会均等法で女性の深夜労働が可能になるなど、今の、共働きが当たり前という下地ができたのが90年代後半。一方で大都市地域における住宅及び住宅地の供給の促進に関する特別措置法(大都市法)が改正され、東京湾岸部などにタワーマンションが建てられるようになったのが95年以降。都心近くに住宅が大量に供給される時代に、忙しい共働き世帯が遠く、通勤に時間がかかる親の実家に住む選択をするわけがありません」。

オラガ総研・牧野知弘代表

実際、全体ではまだ人口増が続いている首都圏でも、地域によっては人口減少が始まっている。たとえば、住宅取得希望者に人気の高い横浜市でも都心部の西区、中区、北部の青葉区、都筑区では増加しているものの、旭区、港南区や磯子区などといった南西部では人口減が顕著。空き家も目立つようになってきている。通勤の便の悪い場所はたとえ首都圏でも切り捨てられていく時代なのだ。

さらに問題なのは、観光資源あるいは自然に恵まれた地方の空き家であれば民泊などに活用される可能性があるものの、都市近郊の、何の特徴もない街、物件には活用の道があまりないという点である。

一方で空き家に対する社会の目はどんどん厳しくなっている。放置していても済んだ団塊世代に比べると、これから空き家を相続することになるその下の世代はそうはいかない。