では、パート等を就業規則の適用から除外する規定はないが、そのパート従業員を採用する際、口頭で「退職金は支給しない」旨を通知し、パート側も同意した場合はどうか。
「労働契約法12条は『就業規則で定める基準に達しない労働条件を定める労働契約は、その部分については、無効とする』と定めています。よって、当該同意事項も無効。パートが仕事を辞める際、雇い主は退職金を支払う必要があります」(同)
後者は、正社員と同じような条件で働くパート等に対し「差別的取り扱い」をしないよう事業主に義務づけるパートタイム労働法8条を根拠として、正社員と同様に退職金を支払うべきだとする場合だ。
しかし、佐藤社労士は「パートタイム労働法8条を発動させるには、とても高いハードルが待っている」と話す。
正社員と同一の労働条件といえるためには、実質的に期間の定めなく働いている必要があるため、契約が切れるごとに反復更新が求められる。また、職務の内容や長期的な人材活用の仕組みなどが同一といえるか否かは、主に「転勤の有無」が基準となるという。
パートタイマーやアルバイト、派遣社員が転勤を命じられる場面は、珍しい部類に入る。仮に転勤の対象となるとしても、正社員には全国転勤があるが、パートはエリア限定の転勤という扱いならば、同一の人材活用の仕組みといえない。つまり、退職金を支払わない差別的取り扱いをしても合法となるのである。
パートタイム労働法の趣旨が真に活かされるためには、さらなる法改正や運用改善が必須だ。
(ライヴ・アート= 図版作成)