いちよし経済研究所の鮫島誠一郎主任研究員が「マクドナルドは、作り置きから受注生産に変わり、クオリティが上がり、食品ロスも減った」と指摘するように、30分ルールは受注生産に適したフットワークのいい体制づくりにも貢献している。しかし、いくら準備を整えていても、客の入りが悪い場合はどうするのか。
「そういうときはメーン商品や客単価の高い商品をお勧めしたり、駅前店なら通りで呼び込みをしたりして売り上げを増やす努力をします。それでもダメならクルーの数を減らす。つまり早めに帰ってもらう。幸い、うちの店舗では自発的に『暇なので帰りますね』と言ってくれるクルーが多い。逆に忙しければ延長してもらうこともある」
A店長は30分ごとに目標達成状況を常に現場に伝えて、達成すればみんなで喜ぶ空気をつくっているせいか、アルバイトが状況を察知して“人員調整”に協力してくれるのだという。
「これを普段からコミュニケーションが取れていない店舗でやったら終わりです。常に一緒に働いて、みんなのモチベーションを上げる雰囲気づくりをして信頼関係を築いている。アルバイトの高校生でも『この30分、どれだけ売れました?』と気にかけてくれるほどです」
鮫島氏は「マクドナルドはアルバイト確保の力が業界でも卓越している。だから24時間営業も短期間で実現できた。定着率のよさは他の外食チェーンにない強みです。アルバイトを上手に育成する教育プログラムのおかげ」と指摘する。
A店長の店舗では加えて、アルバイトの居心地がよく、一種のゲーム感覚で売り上げアップにチャレンジしながら楽しく働ける環境がある。人の扱い方もマニュアル一辺倒ではなく、店長独自のさじ加減が優良店舗の秘密のようだ。
(市来朋久=撮影)