「姥捨山」は極めて合理的!?

2人のケースを専門家はどのように見るのか。ファイナンシャルプランナーの山本俊成氏は、かつてあった「姥捨山」は極めて合理的だったと語る。

「労働力として機能しなくなり、生活費など支出だけが増える高齢者は、企業でいえばリストラ対象。今は言いにくいでしょうが、かつての姥捨山は極めて合理的な文化だったと言えます」

あまりに冷酷な分析に聞こえるかもしれないが、現状を振り返ってみよう。

日本は世界一の長寿国だ。「世界保険統計2015(WHO調べ)」によれば、現在日本人の平均寿命は約84歳。大正時代の平均寿命は約43歳で、この60年ほどで寿命は倍近く延びている。加えて、介護保険が充実していないことも老後問題を深刻化させている。

「遺産相続や医療、葬儀に比べ、介護は親子トラブルが起きがちな分野。日本人は介護保険に興味が薄いが、アメリカの保険会社は介護保険を優先的に考えさせます。国が介護分野の負担を実質国民に任せているからです。対して日本の介護保険には魅力的なプランが整備されていない」(山本氏)

介護にはどれくらいかかるのか。

「自宅介護の場合最低でも300万円(月5万円×5年分)用意することをすすめます。しかし、払えない親は子どもに負担させる。これは大問題。子どもは介護に時間を奪われ収入が減るので、ジリ貧状態に陥るからです」(同)

では、親はどうすればよいのか。

「出費を減らすか収入を増やすか。子どもに頼らず、定年後も稼ぐ手段を考えるべきでしょう」(同)

(伊藤 綾=協力 AFLO=写真)
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