いつまで働けるか、病気にならないか、年金はいくらもらえるか……、年をとるたびに不安になるが、今からできることはあるのか。人気ファイナンシャルプランナーの2人が、「老後の金」をテーマに語る。
介護するときは親の金で
――親の介護で自分の老後プランに狂いが生じるケースもあります。
【横山】ポイントは、そうした事態が一時的なものなのか、継続的なものなのかです。
一時的なものであれば、場合によっては貯蓄を切り崩して乗り切るのもやむをえません。一方、ある程度の継続性が見込まれる場合は、やはり関係するご家族・ご親族で事前に話し合っていただかないと、解決の糸口が見つかりません。
仕事をしながら、家事も、介護もとなると、想像を絶する負担を強いられます。そうなると、どうしてもお金を使って解決・カバーせざるをえない部分もでてきます。つまり、通常の家計のラインを越えて対処しなければならないわけです。
【藤川】介護を必要としている親御さん世代は、今の若い世代よりも圧倒的にお金を持っています。ですから、介護費用は親御さんの年金や貯蓄から引き出すというケースが多い。子供世代の所得は親世代に比べ減っていますから、親の介護で子供が負担するのはお金ではなく、労働力です。
ところが、子供世帯は所得が低いので共働き率が高い。親の介護に労働力を提供すると、結果として、たとえば奥さんが仕事を辞めなければならなくなり、家計の収入が減る。そのダメージが大きいんです。
【横山】それから、親の介護をする場合、誰のお金を、何にいくら使ったか記録しておかないと、相続時にトラブルに発展するケースもありますね。
【藤川】たしかに。ご主人の親御さんが亡くなった場合、奥さんには相続権がありません。奥さんが献身的に介護をしたり、お金を出して介護費用に充てたりしていたとしても、それが寄与分として通用せず、遺産を多めにもらえないケースが多々あります。
ですから、介護にかかるお金は徹底的に親のお金を使ってください。そして、記録をきちんと残すことです。
【横山】介護にかかわっていなかったほかの兄弟姉妹が、いざ相続となると、金額の減りが激しい親の預金通帳を見つけて「これは一体どういうこと?」などと、詰め寄ってきたりすることもあります。親の介護を一身に引き受けてくれた恩も忘れ、「あなたたちの生活費に使ったんでしょ?」とまで言われかねません。それだけお金の記録は大切です。