手作業でも量産化を可能にした製造工程の細分化
長男の経営参画で収益が出る経営に転換
M社と直接取引によるOEM契約を交わした後、白鳳堂の事業は拡大していく。だが受注は好調でも在庫が膨らみ、支払先からの入金が遅れるなど資金繰りが厳しくなる状況が続いた。
この苦境を打破するため、長男の高本壮氏が東芝を退職して白鳳堂に入社。社内の整理整頓と在庫削減を推進して製造工程の見直しを進め、当初3割にも及んでいた不良品の出現率を1000本あたり1本に満たない状況にまで引き下げることに成功する。
手作業で量産化を可能にした製造工程の細分化
同社が売り上げと利益を拡大するには、手作業による付加価値と品質を維持したまま、量産する必要があった。「安定した品質と付加価値を維持し、多品種の化粧筆を量産する」というまさに相反する課題を解決したのは、機械化発想ではなく「製造工程を細分化すること」にあると同社は気づく。
化粧筆の生産工程は原毛の調達から始まり、毛の選別や混合、筆先の整形、毛植えから軸付け(金口に軸をつける)、そして検品という7つの工程に分かれる。白鳳堂はこの7つの工程をさらにおよそ80の工程に細分化し、ひとりの担当者が1つから3つの工程を受け持つ、作業分担方式を採用した。
全ての作業をひとりで行うには時間と経験が必要になるが、製造するプロセスを細分化し、ひとりが手掛ける工程を限定すれば、効率化し量産化が可能だ。この取り組みは、各作業プロセスの精度を高めることにつながり、さらに人材が流出しても自社の製造ノウハウを簡単には持ち出せないというメリットも生みだした。
こうした経緯を経て白鳳堂の名は次第に業界で知られるようになり、2007年頃には世界の著名化粧品会社約70社から化粧筆のOEMを直接受注するまでに成長する。
収益率の高い製造直販方式を採用した自社ブランド
国内販売では、1996年に卸を経由しないインターネット販売を開始。2001年に「コスメ情報専門ポータルサイト「アットコスメ」と共同で自社ブランド商品を開発し、限定500組が数時間で完売した。その後1週間で約1000セット、1年でおよそ3000セットを完売する人気商品に成長。この取り組みにより、同社の化粧筆ブランドが女性たちに知られるきっかけになる。
自社ブランド商品は収益率の高い製造直販方式を採用し、デパートでの催事出店や店舗出店を進めていく。2003年には東京青山に自社ブランド初の路面店を開設し、販売を通じて商品情報や使用方法を発信し、ブランド価値の向上にも活用している。