日本の原発の耐震性は世界最高水準

震度7の地震が発生した熊本地震から3カ月が過ぎた。発生時、国内で唯一稼働していた原発が、九州電力の川内原発1、2号機(鹿児島県薩摩川内市)である。今回の地震では熊本県益城町で1580ガルという大きな揺れが観測された。そのため、震源地から100キロメートル強離れている川内原発の耐震安全性を危惧する声が上がった。

九州電力は「川内原発は、耐震設計の基準地震動を620ガル、原子炉が自動停止する設定値を160ガルとしています。今回の地震により原発で観測された揺れは、地表面で30.3ガル、原子炉建屋が建つ硬い岩盤上では8.6ガルと設定を大きく下回るものでした。これは原子力発電所の安全な運転に影響を与えるものではありません」とのコメントをいち早く発表している。そもそも川内原発では、熊本地震の震源である布田川・日奈久断層帯よりも、さらに発電所に近く、大きな影響を及ぼすとされる震源を想定し対策がなされており、そのことは原子力規制委員会が4月18日に発表している。

ところで「ガル」という耳慣れない単位だが、これは地震による地面や建物などの揺れの大きさを表す加速度の単位である。今回、薩摩川内市で観測された震度4をガルに換算すると、おおよそ25~80ガルが目安になるという。ただし、これは柔らかい地表面での計測で、一般的に地層構造上、硬い岩盤での揺れはそれよりも小さい数字になる。国内の原発などは岩盤上に設置することが義務付けられていたことから、川内原発では8.6ガルの揺れしか観測されなかった。

東京大学地震研究所の堀宗朗教授は、地震工学を専門とする立場から「自然災害、とりわけ地震に対する日本の原発の安全性は世界的に見れば高い水準にあるとされています」と説明する。なぜなら常に最新の学術知見を駆使してきたからだ。さらに、1960年代に商業用原子炉が初稼働してから培ってきた知見も共有しながら、原発の耐震安全性向上に努めてきている。

2011年3月の東日本大震災後、原子力規制委員会は「新規制基準」を策定。有識者ヒアリングや国際基準との比較も行い、13年7月から施行されている。ここでは、敷地内の地下構造をより精密に、3次元的に把握することを求めている。その結果をもとに、原発ごとに、震源を特定した地震だけでなく、震源を特定しない地震も考慮し、耐震設計のもとになる「基準地震動」の見直しや耐震強化が進められてきた。例えば、九州電力は、川内原発の基準地震動を480ガルから620ガルに引き上げている。

「原発の耐震性は、高度なシミュレーション技術を使う評価も検討されるようになってきました。これはスーパーコンピュータを使うシミュレーションで、単なる数値計算ではなく一定の品質が保証されたシミュレーションを目指しています。品質保証のための検証と妥当性確認が重視されているので、原子力発電所の安全に関する説明責任を果たしていくことにも通じます」(堀教授)