安全・安心だけでなく、原子力への信頼感の醸成を

今夏に再稼動を計画している四国電力の伊方原発3号機も地震対策に抜かりはない。ここでは基準地震動を650ガルとしており、四国電力では「これは岩盤上での揺れを想定したものであり、発電所内の建物や設備の耐震設計にあたっては、揺れが増幅することも踏まえています。原子炉格納容器の上層部では5400ガル程度揺れると想定したうえで、その際でも建物や設備の健全性を確保できることを確認しています」としている。さらに、仮に基準地震動を大きく上回る1000ガル程度の地震動が岩盤上で発生した場合でも、安全上重要な設備の耐震性を確保したという。こうした安全性向上に向けた自主的な取り組みは、全国の原発で行われている。

今回の熊本地震の揺れは、最も甚大な被害を受けた益城町で阪神大震災並みだったが、幸い阪神大震災に比べて死傷者が少なくてすんでいる。堀教授によると「神戸から20年余りが経過し、国・自治体や民間が行った防災・耐震投資の結果、より堅牢な街ができていたことは否定できません。東日本大震災でも、阪神大震災以降に見直された耐震基準を満たす構造物は倒壊のような大きな被害を受けておりません」と話す。

原発の耐震性についても同じだ。東日本大震災でも女川原発や福島第一原発では、原発は自動停止し、安全を確保したことかが確認されている。福島では地震に伴う津波により全電源を喪失したが、地震には耐えていたのである。さらに新規制基準の施行後は、より一層安全性は高まったといえよう。

もちろん、いついかなるときでも、人知を超えた災害は発生する可能性があるので、絶対という表現は使えない。だからこそ、原発の再稼動を視野に入れるのであれば、設備などハード面での対策を講じることで安全・安心はもとより、いかに地域住民や社会との対話を積み重ねていくかというソフト面での対応にも万全を期すことが求められる。

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