三浦大根はなぜ消えた?

ただし、それにはきちんと理由があったのです。三浦大根は地面に近い部分よりも地中深くのつけ根の部分の方が太いために、抜くのに大変な力が必要とされるのです。これは高齢の生産者には重労働です。あるいは、三浦大根は煮物に向くという特徴がありますが、家庭において大根の煮物を大量につくるということがなくなっていくにつれて、より生食に向いている青首大根に消費者の目が向くようになったのです。

つまり生産効率の追求や食生活の変化などの理屈によって、生産者も消費者もむしろ青首大根を選んだという過去があるわけです。三浦大根は確かにおいしいですし、すたれて欲しくないと個人的にも思います。しかしだからといって、それと青首大根を否定することとはまた話が違うはずです。

伝統野菜をはやしたてる人はその「伝統」を持ち出して正当性を主張することがあります。しかし、有機生産者の久松達央さんは著書「キレイゴトぬきの農業論」(新潮新書)の中でこのように書いています。

よく「伝統野菜を大切にしよう」と言われますが、持ち込まれた時期の差こそあれ、伝統野菜と言われているものも元々は外国の物です。暑い地域が原産のものを夏野菜、寒い地域が原産地のものを冬野菜と勝手に呼んで日本では栽培していますが、もともとは日本の気候に合わせて生まれていないものが、ほとんどなのです。(中略)それを故郷から遠く離れた場所で改良し、人間の思惑に合わせて育てているのが栽培という行為です。どんなに品種改良や栽培技術を駆使しても、もともと“無理筋”のものもあるのです。

伝統野菜を必要以上に特別視することなく、そしてこれからも増えるであろう新しい品種にも目を向け、野菜には楽しく向き合っていきたいものです。

子安大輔(こやす・だいすけ)●カゲン取締役、飲食プロデューサー。1976年生まれ、神奈川県出身。99年東京大学経済学部を卒業後、博報堂入社。食品や飲料、金融などのマーケティング戦略立案に携わる。2003年に飲食業界に転身し、中村悌二氏と共同でカゲンを設立。飲食店や商業施設のプロデュースやコンサルティングを中心に、食に関する企画業務を広く手がけている。著書に、『「お通し」はなぜ必ず出るのか』『ラー油とハイボール』。
株式会社カゲン http://www.kagen.biz/

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