カチンときたらまずは6秒数える
とはいえ、感情的になって怒りを爆発させたくなる瞬間もあるでしょう。怒りは誰もがもつ感情です。それが自然ですし、決して悪いことではありません。気をつけてほしいのはその表現です。ミスをした部下を思って怒るのなら、それは「叱る」といえます。「事実、影響、感情、尊重」の順に何が問題だったのかを冷静に指摘できれば、部下も理解して受け入れてくれるでしょう。一方、腹の虫が治まらず、怒りをぶつけることで自分が満足したいのであれば、それはただの暴力です。
感情的に怒らないコツは、間を置くこと。怒りは突発的で一時的な感情です。持続時間は6秒ほどだと言われています。カチンときたら、頭のなかでゆっくり6秒数えてみてください。そして間を置いてから、「あいつにもきっと何か理由があるはずだ」と考えれば、論理的に叱れるようになります。
叱った後に相手が納得しているかどうかわからなければ、「何で怒っているかわかったか?」とストレートに聞きましょう。理解していなければ、あらためて説明します。「さっぱりわかりません」とふて腐れているようなら「今日は受け入れる気がないみたいだから、別の機会をつくろう」と日を置きます。一度で理解してほしいという気持ちもわかりますが、そうもいかないのが現実です。「何度言ったらわかるんだ!」は禁句。納得してもらえるまで繰り返し伝える忍耐力は、部下を育てる上司に欠かせない能力です。
私が会社を立ち上げたばかりのころ、土曜日にチーム全員で出社しなければならなくなったことがあります。ところが「休日なのに、どうして出社しなければいけないのか」と文句を言ってきた部下がいました。言い分を認めればチームの和が乱れてしまいます。なぜ土曜日の出社が必要なのか。私は何度も時間をかけて話しました。結局、彼は出社しませんでした。私は出社してくれた社員たちに感謝の思いを伝えて、彼が出社しない理由を説明し、納得してもらいました。もしも理解を得られなかったらチームはバラバラになっていたでしょう。