自ら動かなければ話にならない
【弘兼】東電は4月1日からの電力小売り自由化にともない、発電、送配電、小売りの3つの事業を分社化します。意地悪な言い方になりますが、こうした分社化で事故が風化することはありませんか。
【石崎】事故を風化させないために、それぞれの会社に福島復興推進室を設けました。福島復興本社と必ず連携しなければならないという仕組みを設けています。福島復興本社では、復興推進活動を進化させています。
【弘兼】どのような活動でしょうか。
【石崎】昨年9月に避難指示が解除された楢葉町では、全人口約7400人のうち、500人弱しか帰っていません。その戻った家に毎日社員を2人1組で見回りに行かせています。最初は「何か用はありませんか」と訪ねていくと、「特にない」と取り合ってもらえなかった。けれども、毎日顔を出していると、「なんだ、また来たのか。ちょっと上がっていけよ」と言われるようになった。中には茶飲み友だちになって、1軒の家に4時間も5時間もいるケースが出てきているんです。そういう活動を今、楢葉町だけでなく川俣町や葛尾村、南相馬市などでもはじめています。
【弘兼】地元の皆さんとの接点を増やしていっているのですね。石崎さんがはじめられたフェイスブックもその一環でしょうか。
【石崎】フェイスブックでは、1000人以上の方々と「友達」になっています。そこにはお会いしたことのある人もいれば、面識のない人もいる。バーチャルな場でのお付き合いといえます。そういったお付き合いをリアルに変えていくためには、自分からその人に近づいて、直接会って話をするしかない。福島復興本社では「ふれあい、つながり」をキーワードに掲げ、「最低限、それをやれ」と社員には伝えています。