【石崎】そのほか、東電単体でできることも進めています。その中の1つが、最新鋭の石炭火力発電所の建設です。雇用の創出と経済効果が期待できます。

【弘兼】なるほど。石崎さんは復興本社の代表をやる前から、福島に縁があったそうですね。

【石崎】母親が会津出身でした。「Jヴィレッジ」を建設する際、計画書に承認の判子を最初に押したのが私です。当時、立地環境本部の立地業務課長だったんです。

【弘兼】さらに07年6月から10年6月まで福島第二原発の所長を務めていますよね。

【石崎】技術者ではない私のような「事務屋」が所長になるのは2人目のことでした。

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今年4月1日の分社化後も、各子会社に福島復興担当の部署を設置

【弘兼】聞きづらい質問になりますが、東電には隠蔽体質というものがある。特にそれはいわゆる原発を扱う「原子力屋」に顕著のような気がします。中にいる石崎さんはそのことをどうお考えですか?

【石崎】私は原子力部門、その体質に対してものすごく批判的でした。動燃(※)が「もんじゅ」で事故、東海村でアスファルト火災事故を起こしたことがありました。私は動燃に出向して、動燃改革に関わりました。そして、原子力ムラの常識に唖然としました。彼らはとにかく優秀です。超優秀です。しかし、社会常識がない。「俺たちは30年間これでやってきた。お前みたいな事務屋に何がわかるんだ」という態度でした。

【弘兼】そんな「身内意識」が強い中に飛び込んで、どうしたのですか?

【石崎】当時は事故隠しなどで、「嘘つき動燃」などと呼ばれていました。このままでは組織として持ちませんよ。社会から認められなければ、どんなに凄いことをやっても駄目ですというのを、1人ひとりに会って懇々と話し合いました。

※動燃……動力炉・核燃料開発事業団。高速増殖炉、新型転換炉の開発を専門とする事業団だった。