東電は隠蔽体質を払拭できるのか

【弘兼】とはいえ、東京電力の人間の顔を見たくないという地元の方もいらっしゃるのではないですか。

【石崎】復興本社を作ってすぐに私は、社員に「住民の皆さんと会うときには制服を着て行きなさい」と言いました。住民の中には、東電の話は聞きたくない、制服も見たくないという方もいらっしゃいます。しかし、それでも福島の皆さんのために汗をかく姿を見てもらうしかない。福島を歩き回り、誠意を尽くさない限り信頼回復などありえませんから。

【弘兼】東電全社でも取り組みをされているそうですね。

【石崎】はい。全社員が2泊3日、3泊4日などで福島に来ており、現時点で延べ約23万人が福島で復興推進活動に従事しました。東電の全社員数は3万3000人程度ですから、1人数回は来ている計算になります。社員1人ひとりの行動を積み重ねて、ようやく東電が組織として許されはじめるのかなという思いですね。

【弘兼】復興推進活動の2つ目は?

【石崎】人的貢献活動だけでは、本当の意味での町の復興にはなりません。もっと大きな「まちづくり」の仕掛けが必要です。つまり、生活基盤を整備し、新たな雇用を発生させる。国や県、自治体と一緒に東電は責任を果たしていかねばなりません。

【弘兼】「まちづくり」ですか?

【石崎】アメリカのワシントン州にハンフォード・サイトという核兵器研究開発の施設があった地域があります。その一帯は、ある時期までアメリカで最も放射能汚染が激しい地区でした。そこで国が12兆円の予算をつけ、除染をしながら町作りを進めたのです。現在放射能汚染は激減し、研究成果はハイテク農業に利用され、医療、食品加工業なども発展しています。福島でも同じように国の主導のもと、廃炉の技術を中心とした研究拠点等を作る「イノベーションコースト構想」があります。東電はプロジェクトの実現に際して、人材面、技術面、資金面において、貢献していきます。

【弘兼】放射能汚染と廃炉という困難な事業を地域の成長につなげていくのですね。

(1)給食センターには最先端の機器を導入。(2)(3)給食センターから9km地点にある大型休憩所内の食堂。メニューは日替わり。定食2種、丼物、麺、カレーの全5種から選べる。(4)食堂と同じ建物内にローソンがオープン。(5)休憩所内の窓は1カ所のみ。最上階の一室に備え付けられている