ガラス業界は、建築用と自動車用の「板ガラス」と、薄型テレビやPCなどディスプレーに使われる「液晶ガラス」の2つにセグメントが分かれるが、いずれにおいても日本のガラスメーカーは世界的トップクラスのシェアを誇る。どちらも近年は供給過剰による需給ギャップによって業績は厳しかったが、昨年から、ようやく改善の兆しが見えてきた。
まず板ガラスは、2011年頃から金融危機などを発端に欧州の建築需要が激減。日本板硝子、旭硝子ともに業績が悪化した。2社はここ数年、リストラなどを進めて生産能力を集約、コストを削減してきたが、昨年あたりでそれが一段落。原油安やガス価格の下落などでコストも削減されたことで、収益は改善傾向にある。だが、中国などの新興国メーカーが台頭してきており、汎用化が進む。日本企業としては、軽量化や薄型化といった付加価値で差別化を図らないと、将来的には厳しいだろう。
液晶ガラスは、米コーニングを筆頭に、日本の旭硝子、日本電気硝子の3社で世界シェアの9割以上を占めている。10年頃まで、液晶テレビの世界的な普及などによって市場が爆発的に拡大し、高成長、高収益が続いた。しかし、11年以降はその需要も一巡し、成長も鈍化。にもかかわらずシェア争いで低価格戦略を続けた結果、収益が一気に悪化した。現在は価格規律を意識して、コスト削減なども進め、やっと回復基調に乗りつつあるところだ。
私が個別に注目しているのは液晶業界3位の日本電気硝子だ。同社は、自動車で使われる樹脂部品の耐久性や強度を高めるガラスファイバーのシェアで世界トップの30%強を誇る。自動車は世界的に軽量化や低燃費化が進み、金属製品を樹脂製品に置き換える動きは今後も進む。その中でガラスファイバーは安定的な需要成長が見込めるだろう。
(構成=衣谷 康)