若年の低学歴層の飢餓経験率が突出

2010~14年に各国の研究者が共同で実施した『世界価値観調査』では、「この1年間、十分な食料がない状態で過ごしたことがあるか」と尋ねています。いわゆる飢餓経験です。飽食の国・ニッポンで飢餓なんてあるわけない、と思われるでしょうが、そんなことはありません。

国民全体の飢餓経験率は世界でも最低レベルですが、属性別にみると、率が際立って高い層があります。図1は、18歳以上の国民を「年齢×最終学歴」の群で区分けし、群ごとの飢餓経験率を出した結果です。

各グループの量の比重は、四角形の面積で表現されています。50歳以上の高齢層が多いのは、人口の少子高齢化を反映しています。学歴構成は、若年層ほど高くなっています。最終学歴が義務教育(中学校)の者は少数です。先ほど述べたように、上級学校進学率が高まっているためです。

図中の%値は、各グループの飢餓経験率ですが、若年の低学歴層で値が飛びぬけて高くなっています。30歳未満の中卒者では17.9%、6人に1人が飢餓を経験していると。上記の表現を繰り返しますが、マイノリティー化した低学歴層に困難が「凝縮」されている構造を見て取れます。表2でみた犯罪率の学歴差は、こうした生活状況の違いによる可能性が大です。

日本は、国全体は豊かですが、少数の不利な属性群に困難が集中する事態になっています。日本の子どもの貧困率は16.3%ですが、ひとり親世帯に限ると54.6%、世界でトップです(2012年)。全体とひとり親世帯の落差がここまで大きいのは、日本の特徴です。2人親の標準世帯を前提に、諸々の社会制度が組み立てられているためでしょう。

「豊かさの中の貧困」。われわれは、この問題の重さを認識しないといけません。今回紹介した、学歴別の犯罪率と飢餓経験率は、それを教えてくれる最良のデータです。

(図版=舞田敏彦)
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