一般事務職のコネ入社、廃止から一転、復活
以上の例は極めてハードルの高いコネ採用であるが、もっと緩やかなコネ採用も始まっている。
2000年以降、転勤なしの一般事務職の採用が総合商社を中心に廃止されたが、近年は復活している。一般事務職を派遣社員や契約社員に委ねる傾向は今も強いが、その一方で人材が頻繁に入れ替わるため、ノウハウが一向に定着しないという弊害もある。そこで、一般事務職のコネ入社の回帰につながったといわれる。
とある大手建設関連会社でも採用を復活し、しかも全員を「紹介採用」に転換した。
同社の人事担当者は次のように話す。
「以前、事務職採用を廃止し、新卒は全員総合職に切り替えたが、事務的な補助業務がうまく回らなくなってしまった。そこで、新たに基幹業務を担わない職種を限定した社員区分を設けて採用することにした。採用に当たっては、会社のビジネスにも直結する取引先などの紹介採用を優先することにした。今では紹介が圧倒的に多く、さらにその中から絞り込まないといけないという狭き門になっている」
事務職とはいっても採用されるのはほとんどが大卒の男女だ(いわゆるOLと呼ばれる女性の割合が大きい)。大口の顧客の紹介であればビジネスにもつながり、その意味では戦略採用といえるが、能力のない人材を雇ってしまうリスクはないのか。
人事担当者に聞くと、そのあたりは計算済みだった。
「(一般事務職は)総合職と違って基幹業務を担うことがなく、管理職になることもない。もちろん能力次第で総合職に転換できる仕組みは設けているが、事務職のままだと給与がそれほど上がらないように設計している」
つまり、総合職と違って人件費コストの負担は少なくてすむというリスクも踏まえて実施しているのだ。
コネ採用も昔と違って、より経済合理性を追求した採用に変化している。コネを使うにも前述したようにまず自身の実力が問われる一方、有力筋の縁故採用でも会社人生が必ずしも幸せになるとは限らないのだ。