大手は中小に口出し「賞与出し過ぎ」「交際費高い」

以上のようにデータをみてわかったこと。それは、アベノミクスの恩恵に浴したのは、結局のところ「大手の正社員」だったということだろう。また、公務員の賃金は、基本的に大手に連動しているので、官民格差は確実に拡大したと想像できる。

極めて対照的なのは、中小企業だ。わずかな“おこぼれ”しかなかった、という表現はあながち間違っていないだろう。滴り落ちる「トリクルダウン(富める者が富めば、貧しい者にも自然に富が滴り落ちるという経済理論)」など、最初から期待できるはずもなかったのかもしれない。

◎下請けいじめの封建的な取引こそ問題

日本で、価格の決定権を持つのは、大手メーカーと大手小売業だと思うが、いかがだろうか? 大手メーカーは下請けを持ち、その下請けはさらに孫請けを持つ。だから「孫請け」の中小企業は、数量も価格も握られてしまい、経営状況を改善することなど、できっこない。

中小企業庁によれば、中小企業の会社数は約150.8万社で、全会社数に占める割合は99.2%だ。ほとんどがアベノミクスなど関係ない、ということになるのだ。

ある孫請けの中小企業(自動車関係)の経営者はぼやく。

「得意先は決算書の提出を当然のように求めてくるが、なぜ、出さないといけないのか? それに、得意先の調達担当者は『役員報酬が高い』とか『交際費が多い』とか、果ては『賞与を出し過ぎ』とか、口を出してくるが、なぜ、そこまで言われなければいけないのか?」

このような封建的とも言える取引実態にメスを入れない限り、中小企業の従業員の年収が上がることはない。下請法の改正が必要だと、筆者は考える。

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