社会保険料を払うパート主婦が増える
前回の記事(http://president.jp/articles/-/17407)で、本来喜ぶべき「時給アップ」を好ましく思わないパート主婦の「本音」を書いた。
それは、パートで多少手取りが増えたとしても、自分や夫の税金・社会保険料の負担が増え、世帯年収が減ってしまったのでは元も子もないというものだった。
現状、パートの収入額により、税金や社会保険料(本人の健康保険料、厚生年金保険料など)の有無、控除(夫の収入に対する税優遇措置)の有無が変わる仕組みになっている。これがいわゆる100万円の壁、103万円の壁、130万円の壁、141万円の壁といわれているものだ(前回の記事を参照ください)。
そして、2016年の10月からは、新たに「106万円の壁(106万円で夫の扶養を外れる)」が新設されることになり、パート主婦はますます神経を尖らせなければならなくなった。
「景気上昇」などを背景にした時給アップは痛しかゆしといった側面があるのだ(図1参照:筆者の試算では、パート主婦の年収が130万~150万円となると、夫の収入と合わせた世帯年収では“損”をしてしまうケースが出てくる。ただし、老後に妻が受け取る年金額が増えるなどのメリットもある)。
ただ、パート主婦が時給をアップしてほしくないのは、「夫の扶養の範囲内で働きたいから」という理由だけではない、と私は思う。
「平成27年版パートタイマー白書」(2015年12月)が非正規雇用で働いている労働者に、その働き方を選んだ理由を聞いている。
「正社員意向あり」の者では、「正社員としての職が得られないから」が41.4%で最多となっているが、「正社員意向なし」の者では、「気楽に働きたいから」が51.2%、「自分の都合の良い時間や曜日に働きたいから」が44.5%となっている。
正社員のように責任やノルマなどに縛られずに、自由気ままに働けるのもパートの利点だ。だから、時給が上がることによって、それ以上の成果を求められるのであれば、働きたくないというパート主婦たちの気持ちも理解できる。
パート主婦が働くのは主に家計の足しにするためであり、生活の中心は家庭にある。仕事によるストレスやプレッシャーで、円満な家庭生活に支障が出る働き方は望まないだろう。