「大丈夫です」が一番信用できない

わからない状況を数字で捉えるのに不可欠なのが、数字に対する想像力です。よい成績を残した営業社員に「すごいね、きみ、どうやって頑張ったの」と聞いたときに「いやぁ、たまたまです」と答える人間がいる。そのときは「こいつダメだな、まぐれだな。同じことは二度とできんわ」と思うわけです。たまたまで終わったらそこで想像が停止してしまい、次に繋がりません。数字を見たときに、その背景に何があるのかを想像する。数字は何らかの行動の結果として表れるのです。

会社として期首の目標数値やKPI(重要業績評価指標)を決めるときも、この数字の想像力が判断基準になります。

部下が来期の目標数値を持ってきたとしましょう。そこで彼が、「今回の数字の根拠は……」と大量のデータを一つ一つ説明し始めたら、その時点で不合格。上司は瞬時にその数字の背景を想像することができず、判断できないためです。逆に、「数字を導いたポイントはここにあります」と重要な点だけを簡潔に説明してくれたときは、安心できます。ちなみに説明を聞いたとき咄嗟に「大丈夫です、頑張ります」という人がいますが、これが一番信用できません(笑)。もちろん、私の想像が間違っていることもあります。そのときはまた私自身、想像力の修正をするのです。

どの数字を見るかを決めるときも想像力が必要です。東日本大震災での経験で、そのことを実感しました。震災発生当時、私は業界団体である日本損害保険協会の会長をしていました。損保業界としてできる貢献は何かを考えたときに出した答えが、被災者の方への保険金の早期支払いでした。どうすれば保険金がスムーズに払われるかを把握するために、私は普段は頻繁には追いかけない「支払率」を日々チェックするようにしました。加盟各社に「1日も早く保険金を払うようにしましょう」と伝え、当社でも手続きを早く進めるために、東北エリアの支払い部門の要員を延べ3600人増やし対応にあたらせました。結果として地震保険の損保各社合計の支払額は過去最大の約1兆2500億円となり、そのうち約1兆円を震災発生から3カ月で払うことができました。普段は日別では追わない支払率を見て、アクションすることで結果に繋げることができたと考えています。