窮地なのに無関心&諦め、あんまりな緩慢さ

それをグラフにしてみましょう。図2は、横軸に20代、縦軸に70歳以上の選択率(要望率)をとった座標上に、31の要望項目を配置した散布図です。

点斜線よりも下にあるのは、高齢者よりも若者の選択率(要望率)が高い項目です。景気対策、雇用対策、少子化対策、教育の振興などは、世代差が大きくなっています。雇用対策の要望率は、若者が51.2%、高齢者が20.5%と、30ポイント以上も開いています。

自殺対策の要望率も、「若者>高齢者」であることに注目。第1回(絶望の国 日本は世界一「若者自殺者」を量産している http://president.jp/articles/-/17058)の記事でみたように、国民全体の自殺率が低下する中、若者の自殺率だけは上昇しています。就職失敗自殺、雇用の非正規化、ブラック企業の増殖……。自分たちの「生」を脅かす状況への危機感の表れでしょう。

「18歳以上」が選挙に行けば流れは変わる

若者がもっと選挙に行くようになれば、政治の重点もこれらの事項(図の右下)にシフトしてくるはずです。若者は政治に多くの要望を持っていますが、それだけではダメ。自分たちの要望を実現してくれる候補者(政党)を推すという、具体的な行動をとらないといけません。それが選挙での投票です。

近年、若者の投票率を何とか高めようと、大学のキャンパス内に投票所を設けたり、ネット投票の導入が議論されたりしています。

今の20歳は、90年代半ば生まれのデジタル・ネイティヴ世代。やり取りはほとんどネット。固定電話の作法を知らぬ人もおり、上の世代を驚かせてくれます。投票所に出向き、紙に候補者名を書いて箱に入れるという形式も、この世代には馴染まない(抵抗がある)のかもしれません。ネット投票が実現したら、表1の投票人口ピラミッドが逆転するかもしれませんね。

選挙権の付与年齢が、20歳から18歳に引き下げられたことも注目ポイント。高校生にも、社会を動かす主体として振る舞う道が開かれました。今年7月の参院選における、ハイティーンの投票率がどれくらいになるかが注目されます。

同性カップルを夫婦関係として認める条例を最初に作ったのは、東京都の渋谷区でした。言わずとも知れた、若者の街です。戦後の短期間で激しい社会変化を遂げた日本では、諸々の意識・価値観の世代差が大きくなっています。

たとえば、同性愛に対する寛容度をみると、高齢者はとても低いのですが、若者は、同性婚が合法化されている国と遜色ありません(「同性愛への寛容度で分かる日本の世代間分裂」『ニューズウィーク日本版』、2015年9月29日、http://www.newsweekjapan.jp/stories/culture/2015/09/post-3946.php)。

若者の意向が政治に反映されることで、社会が変わる可能性は十分にあります。今年の参院選では、投票所にて多くの若者の姿が見られることを願います。

(図版=舞田敏彦)
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