東洋には覇道よりすぐれた王道の文明がある

だが、そのことが後に中国人民を塗炭の苦しみに追い込んでいく。49年に誕生した新中国では、毛沢東の独裁的な政治によって人民が多大な犠牲を強いられた。具体的には、新しい社会主義文化を創生するという名のもとに58年から進められた「大躍進政策」と、それに続いて66~76年にわたって行われた「文化大革命」である。欧米に追い越すために鉄の増産を試みたが、いたずらに国土を荒廃させ餓死者を増やしただけだった。さらに、知識階級を粛清したことから経済の深刻な停滞を招いてしまう。

その後、78年から中国政府は計画経済から市場志向型の経済へと舵を切る。この結果、数億の中国人民が飢えから脱出することには成功した。とりわけ2000年代に入ってからは、毎年2桁のGDP成長率を示した。最近でこそ、その勢いにやや陰りが見られるものの、堂々たる世界第2の経済大国である。そして、いまの中国で毛沢東は「建国の父」として崇められ、その肖像が天安門に掲げられている。

蒋介石が私淑した孫文は「東洋には"覇道"よりすぐれた"王道"の文明がある」と語っていた。残念ながら、20世紀の中国は西洋列強による植民地支配、そして中国共産党の圧政に振り回され続けた。ただし、歴史を直視すれば、中国の歴代王朝においては、王道に基づく善政を敷いた皇帝も少なくない。そうであるならば、やがて王道のDNAが起動する日もあるはずだ。

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