決済分野FinTechに最も注目
前回ご紹介した通り、貸し付け・ローン(図1では預金・貸借金)分野では諸処の条件(金融リテラシー水準、ベンチャー投資市場、金融市場の成熟度等)が異なり、欧米FinTechより極めて慎重な展開が必要だ。勝手な想像ではあるが、金融庁が銀行の業務範囲規制を緩和する方向(ロイター「銀行の業務範囲規制を緩和へ、フィンテックの活用促す」 http://jp.reuters.com/article/fsa-it-idJPKBN0TZ0GO20151216)な事も、その一旦かもしれない。
一方、日本でも欧米並みの大きな進展が期待でき、世界で最も注目を浴びているのは「決済」分野だ。米国におけるこの分野に対する投資は昨年約38億米ドル(約4500億円、240案件)で、過去最高水準。
図1では「決済」分野をキャッシュレスと新興決済手段の2つイノベーションを挙げているが、キャッシュレスの分野では日本でも古くから取組みが行われてきた。ソニーが開発した非接触型ICカード 技術FeliCaは1980年代後半に研究が始まり、1997年香港で「オクトパスカード」(当初は交通用ICカード)としてデビュー、2001年にはJR東日本「Suica」に採用。約46%の世帯に電子マネー所有者がいる日本は電子マネー先進国でもある[注1]。
近年の海外FinTechベンチャーの展開はさらなる利便性を目指し、幅広い成長を見せている。この分野の伝統的金融機関であるアメリカン・エキスプレス(以下AMEX)、マスターカード、ビザの3社がそれぞれ異なる方向性でFinTechベンチャー企業とグループ提携や資本提携したりしている事は、非常に興味深い。AMEXは最も活発で、国際決済や消費者向けサービスの強化をしている。マスターカードはモバイル決済や決済認証、ビザは決済新技術や認証システムの方向性だ。いずれも、資金の大小、どこの場所にいても、また、どのような時間でも、より低コストの決済サービスが消費者とビジネスを繋ぐ。