本には人生の智恵が詰まっている

1973年、小説『剥製博物館』で「新潮新人賞」を受賞した。これをきっかけに仕事の依頼が続く。歴史ものの作品も増えていった。しだいに作家としての足場を固める。

この頃に知り合ったのが、詩人の田村隆一氏だった。泉さんは、田村氏は「文章の天才」だという。

「今、活躍している著名な詩人も、田村先生を越えることはできませんよ。カネになる文章の書き方を教えていただきました。私がまだ迷いのあった30~40代の頃、君はモノを書いて生きていくことができると何度もおっしゃっていただいたのです。大きな励みになりましたね」

その後も歴史に関する書物を書き続け、今では70数冊になった。最近は、ネットにも書く。Webサイト『NEC Wisdom』では毎月、戦国の人物評伝『乱世を生きぬく智恵』を書き下ろし、アクセス数1位の人気連載となっている。

94歳となった母は、地元・湘南のタウン誌『湘南百撰』の編集・発行人をしている。その雑誌にも、泉さんはコラムを寄せている。

年末12月30日、31日には、歴史番組『歴史を歩く』のスペシャル版が放送される。タイトルは『鉄砲伝来ときりしたん』である。泉さんは「鉄砲とキリスト教の伝来が日本の近代化の種になったのですが、番組ではその影響がどんなものであったかを描いています」と説明する。

九州・種子島や長崎などに、番組のクルーと取材に出かけた。

「キリスト教に熱心だった遠藤先生に導かれたような思いです」とかつての恩師への感謝の念を忘れない。

最後に、こんなアドバイスをしてくれた。

「自分は学歴があるのに出世できない、などと悩む人はどうか、本を読んでほしい。ネットやテレビのようなデジタルだけに頼ると、考える力が弱くなります。アナログな本には、すばらしい人生の智恵がいっぱい詰まっています。本を読まないなんて、もったいないですよ」

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