少年時代から私の中に棲みつき形成されてきた私なりの死生観や、それに基づく生き方、身の処し方も少なからず影響していたと思う。いつもカバンの底にある鴨長明の随筆『方丈記』の書き出しに凝縮された無常観がそれだ。

「ゆく河の流れは絶えずして、しかももとの水にあらず。/よどみに浮(うか)ぶうたかたは、かつ消えかつ結びて、/久しくとゞまりたるためしなし。/世中(よのなか)にある人と栖(すみか)と、又かくのごとし」

――ジタバタしても、時が来ればいずれ滅びる身。何でここであくせくしたり、足掻いたり、焦ったりする必要があろうか。

現在は3カ月に1回、定期的な検診を受けている。いまだにがんから無罪放免とされるには至っていない。私の体の中に潜んでいるがんが、その姿をいつ現してもおかしくはないが、今ほど人生が充実しているときも過去になかったと思っている。

▼がんとよく生きるための3カ条
[1]患者としての自分を、取材者として観察する
[2]“ネガティブ”には“ポジティブ”が貼り付いている
[3]いずれ滅びる身、ここであくせくする必要はない

ジャーナリスト 鳥越俊太郎
1940年、福岡県生まれ。京都大学文学部卒業。毎日新聞社入社。「サンデー毎日」編集長等を経て89年よりテレビ界で「ザ・スクープ」キャスターほかを歴任。著書多数。
(小原孝博=撮影)
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