『アンパンマン』のような、長期にわたるヒットは、必ず、子どもたちの心を惹きつける何かを持っている。ものごころがついたばかりの子どもが、夢中になり、釘付けになる。そこには、大人のような意味や理屈は、存在しない。

大人たちは、「こうすればヒットする」「今の世の中は、こうだから、こう仕掛ければいい」などと、あれこれと考えて、試みる。しかし、ヒットを決めるのは、結局、人々の中の理屈以前の「子ども心」の動きだ。

思わずぐっとくる。そのような、人間の中のある意味では動物的衝動こそが、ヒットを生み出すのである。

経済学者のジョン・メイナード・ケインズは、人間が行動に駆り立てられるその本能のようなものを、「アニマル・スピリッツ」と呼んだ。この「アニマル・スピリッツ」においては、子どもも、大人も同じことである。

多くの大人は、おそらくは、賢くなりすぎている。むしろ、自分が2歳くらいのときから変わらずにある「子ども心」を上手に思い出すことが、ヒットを生み出す秘訣だということができるだろう。

そして、ヒット作品には、必ず、予定調和ではない隠し味がある。

『アナと雪の女王』では、昔話における定型の、「素敵な王子さま」というモティーフをあえて封印して、力強く、美しい新しい女性像を描いた。『アンパンマン』には、お腹をすかせた人に、自分の顔の一部を食べさせるという、身を切るような物語がある。

結局、生きるということは、きれい事だけでは済まされない。ハッピーエンドになるとも限らない。子どもたちは、すでに、そのような生きることの真実を知っている。

大人の賢さがかえって邪魔になる。自分の中の「子ども心」と対話することが、ヒットにつながるのだ。

(写真=時事通信フォト)
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