離婚調停中に夫が死亡。妻は相続可能か
就活、婚活、保活(=子どもを保育園に入れるための活動)……。近年、いろいろな言葉に「活」をつけるのが流行っています。弁護士の私がライフワークとして関わっている「終活」(=人生の終わりをよりよくする活動)もその一つです。
そして最近では、離婚に向けた準備のことを「離活」などということもあるようです。
この、離活を始めるときには、終活もスタートさせた方がよいのですが、それはなぜでしょうか。
まず、相続についての基本的な知識ですが、夫が亡くなれば、夫の遺産は妻が相続します。子どもの有無、親が生きているかなどによって、妻の相続分に変動はありますが、妻が相続すること自体は変わりません。
それでは、万が一、離婚調停中に夫が亡くなってしまった場合、妻は夫の遺産を相続できるのでしょうか。
離婚が成立すれば夫婦関係は解消されるので、夫の遺産について妻に相続権はなくなります。しかし、離婚が成立していない限りは、離婚調停中であっても妻に相続権があります。
そうなると、答えは、YES。離婚調停中に夫が死亡した場合であっても、妻は夫の遺産を相続することになるのです。
具体的なケースで見てみましょう(※実例をベースにした架空のケースです)。
三宅孝史さん(仮名、45歳)は、妻と結婚して15年。子どもはいません。
ある日、妻が浮気をしていることが発覚したため、三宅さんは、妻との離婚を決意しました。しかし、妻とは慰謝料や財産分与など離婚の条件でもめて、離婚調停を申し立てました。
三宅さんは、妻の浮気発覚と同時に別居し、実家に戻り両親と同居をしていました。
そんなある日、離婚紛争の心労がたたったのか、三宅さんは心臓発作を起こして亡くなってしまいました。
離婚調停中だった妻は、葬儀にも来ません。三宅さんの両親も「なんて薄情な女だ」とカンカンです。
このようなケースであっても、三宅さんの遺産は、妻が相続できるのです。相続人が妻(配偶者)と両親なので、三宅さんの遺産の3分の2は妻が相続します。
離婚調停中に同居していた両親が相続できるのは、遺産の3分の1に過ぎません。
離婚調停中であっても配偶者であることにはかわりはないので、相続分には何ら影響はありません。たとえ、妻が浮気をしたという原因で離婚を協議しているという事情があっても、そのようなことも関係ないのです。