揉めないコツは「早めに、オープンに」
●1月1日 早朝
父が死んだ。心筋梗塞だった。
もとは上場企業のサラリーマン。現預金や債券類はほどほどだが、東京郊外に一戸建ての家を持ち、出身地の田舎にもいくつか不動産を所有している。相続人は母と自分たち兄弟2人。相続税を払わなければいけないのではないかと心配だ――。
現時点での相続税の課税対象は全相続件数の4%程度といわれている。これまでは、よほどの資産家でなければ気にする必要はなかった。しかし、法改正により15年から相続税の課税最低ラインが引き下げられるため、前記のような中流家庭でも相続に神経をとがらすケースが増えている。
「最近は亡くなってすぐ、当日のうちにご相談をいただくこともあります。お葬式の日程がこう決まりました、遺言書があるので、いつ切り出せばよいでしょうか、というのです。そういう方は、早ければ告別式の日に、遺言書の内容を公開して相続の段取りを始めます。お金に関するタブー意識がなくなりつつあるのです」
弁護士や不動産鑑定士といった専門家と連携し、主に資産家の相続対策を手がけている相続コーディネーターの曽根恵子「夢相続」代表取締役が明かしてくれた。
なぜ、そんなに早く相続の話を始めるのか。
一つには、配偶者や子どもなど法定相続人が相続をするかしないかの意思表示をする期限が死亡時から3カ月後、故人の収入に関する申告(準確定申告)の期限が4カ月後と、意外にタイトなスケジュールが待ち受けており、ぐずぐずしているわけにはいかないからだ。しかも、その間には遺言書の確認、法定相続人の確認、遺産の項目や総額の確定といった厄介な仕事をこなさなければならない。
仮に相続税の申告が必要な場合は、10カ月後(このケースでは11月1日)までに申告と納付を行う義務がある。持ち時間は案外限られている。