日本語と英語の違いを肌で感じた

【三宅】そうです。前に出ていって、挨拶でも自分を大きく見せる。

【かい枝】落語っていうのも、どちらかと言うと、引きの芸というか、タイプもいろいろありますけれども、言葉をポンと投げかけることで"間"を作って、それで笑いにつながる芸です。相撲なんかでも、仕切りがあることで、立ち合いへの気が充実していく。プロレスなんかであんなことをしたら怒鳴られますよ(笑)。

振り返ってみると、僕はその10年間ずっと、日本語落語の"間"を、そのまま英語落語に置き換えて演じていたような気がします。だから、アメリカ人にはおとなしい英語になっていた。だから「もっとおまえ、自信を持って主張してやれよ」って言われて、それで気持ちが変わりました。アメリカでは90公演しましたけど、メチャクチャオーバーになった。もうステージに上がって「ワーオ」とか。頭を下げて、扇子も、拍手を聞いた後になって、言葉と言葉の間もつめて、押しでやりました(笑)。

そうしたら、ものすごくウケるようになりました。アメリカのコメディーに詳しい人に聞いたら「アメリカのコメディアンも、押しの人が圧倒的に多い。引きの人もいることはいるけど、そんなにいない。割合で言うと、9割が押しの人だから、絶対押しのほうがいいんだよ」って言われました。

それで、自信を持って日本に帰ってきて、日本の寄席に出たら、全然ウケない(笑)。やっぱり日本では、ゆっくり高座に上がって、落ち着いてしゃべるのがいい。三味線のお姉さんが、「あんた、前、出過ぎやわ」と。落語をわからん人にわかってもらおうと思って、もう必死でパワフルにやっていた癖が抜けなくて。だから、帰国後3カ月ぐらいは落ち込んでいました。

そこで気づいたのは、三宅社長がおっしゃっていたけれども、日本語をしゃべる意識と、英語をしゃべる意識を、ちゃんと切り換えたほうがいいということ。日本語は協調してしまうから、ついつい遠慮がちになってしまうと。けれども、韓国語とか中国語はどっちかというと主張するほうだから、向こうの学習者のほうが英語を発信しやすいと。これは、僕の経験とピタッと重なりました。

【三宅】イーオンには外国人教師が500数十名いますけど、彼、彼女たちによく話をするのは「あなた方は英語を教えると同時に、日本語も学んでほしいし、あなた方の文化を教えると同時に、日本の文化も学んでほしい」ということですね。

どちらが優れている、ということではなく、お互いの違いを理解してリスペクトする。日本の文化はおっしゃる通り1歩引いて、お辞儀をして、自分を小さく見せる、しゃしゃり出ない、主張しないことが美徳とされる、察しの文化です。昔から日本の国は大和の国、大和は大きな和と書くわけで、昔から日本は和の国だと伝えています

(岡村繁雄=構成 澁谷高晴=撮影)
【関連記事】
なぜ日本人は英語を話せないのか
プロが添削! 日本人の英文メール、ここがダメ
子供たちよ、英語のまえに国語を勉強せよ。
英語の習得に欠かせないある一つの方法とは
大前研一直伝「無敵のビジネス英語」講座