英語落語を半年間アメリカで公演
【三宅】さて、英語落語ですが、師匠の発音がとてもしっかりしてわかりやすい。そこで、最初の英語との出会いはどうだったのですか。私たち、英語学校を運営している者から見ると、音を重視されたに違いないと思います。
【かい枝】中学3年間、同じ先生にずっと教えていただいた。ETというあだ名のとても熱心な先生で、映画のETにちょっと似ていたのと、イングリッシュ・ティーチャーの頭文字です(笑)。その先生が、常に音読。もう教科書をずっと音読して、竹の鞭を持っていまして、発音が悪いとピシッ、ピシッと叩く。
【三宅】スパルタ教育ですね。
【かい枝】鬼のような(笑)。でも、その先生が授業の合間にちょっと、ご自身の海外での経験を語ってくれるわけです。アメリカ大陸を車で旅していたとき「ネバダ州の砂漠を走って来たら、目の前に星空が見えてきたんや」と。そう、ラスベガスですよ。その記憶が英語落語につながった気がしますね。中学校の教室でそういう海外の体験談を聞かせてもらい、英語が話せると、すごく世界が広がるんじゃないかっていう夢を抱かしてくれた。本当にありがたいと感謝しています。
【三宅】しかも、師匠の英語は聴く人に伝わりますね。日本人の英語学習者にも英語が上手な人はいるけれども、なかなか外国人に伝わりづらい。特に相手が複数の場合に、自信がないのか、発音に力強さがなく、相手の心に入っていかないわけです。それではダメで、これからはしっかり発信していく英語が重要です。
【かい枝】僕は、英語落語を1998年からやっていて、2008年に文化庁の文化交流使に任命されて、半年間アメリカをキャンピングカーで回りながら、あちこちで落語をやりました。それまで、10年の実績がありましたから、自信を持って渡米したのです。最初の公演先のシアトルで、そこに来たお客さんに、「おまえは自信がないのか」って言われてしまった。「おまえの落語を聴いていると、なんか自信がなさそうだ」と。
以前、三宅社長から、それは文化の違いだとお聞きしましたね。日本語というのは協調と謙譲の言語であり、一歩引く。挨拶する時も、腰を折って「はじめまして」。でも、英語は踏み込む、主張する文化。だから、握手する時も一歩グッと前に踏み出す。それが知らず知らずのうちに出ていたのかもしれない。