発想の原点はお客様から聞く力
「営業を『事前準備』→『アプローチ』→『ヒアリング』→『プレゼンテーション』→『クロージング』の5つのステップに分けた際に、売れない営業は『事前準備』と『ヒアリング』のプロセスが弱いという調査結果があります」(小松氏)
事前準備とは、面談相手の情報を知っておくことだが、売れない営業は表面上の情報だけで面談に臨んでいるケースが見受けられる。一般的な顧客の事前調査は「3C(自社、競合、顧客)分析」だが、これに顧客の顧客、顧客の競合の2Cの情報を加えたものを「5C分析」という。顧客のニーズに対する仮説をより深く構築する作業である。「お客様の顧客の売り上げが好調だから、こういうニーズがあるはずだ」「お客様の競合が新商品を発売したから、こういう要望が出てくるはず」といった具合だ。
「事前準備は仮説力。仮説力は発想力です。発想の原点はお客様をより深く知ることです」(小松氏)
ここでいう「ニーズ」は、潜在的なニーズであることが多い。お客様自身も気が付いていない、もしくは、自分でも上手く説明ができないような要望である。
例えば、「デジカメが欲しい」という表面的(顕在的)なニーズだけをとって、「いまこの機種がイチバン売れていますよ」というだけでは、ニーズを満たしたことにはならない。「デジカメで何がしたいのか」というのが本来のニーズである。さらに、お客様の話を詳しく聞くことが必要になる。「子供の写真をキレイに撮りたい」という回答が得られれば、「それなら動きを捉えるハイスピードシャッター搭載の機種がおすすめですね」という本来のニーズを満たす提案ができる。
ところが、売れる営業はさらにこう続けるというのだ。「撮った写真はどうされるのですか?」と。そこで、「祖父母にも見せたいわ」という返事が返ってきたとすれば、「では、パソコンを使わなくてもインターネットで画像を送ることができるWi-Fi接続もできるこちらの機種がおすすめです」と即座に応対する。お客様自身が気付いていなかったニーズを引き出したうえで、それを満たす提案を行えば、購入の確率は確実に高くなるはずである。
「ヒアリングとは『傾聴』することです」(野部氏)
相手の話をただ聞くのではなく、注意を払って、より深く、丁寧に耳を傾けることが大切なのである。「聞く」ということはお客様に「話して」もらうということにほかならない。傾聴ができていない営業マンには信頼が生まれず、お客様は何も話してくれない。したがって、ニーズを引き出すこともできない。一方的に自分だけが話をする営業が論外なことは言うまでもない。