お客様のニーズを仮定する力
話題の商品や最新の商品だからという理由で、簡単にモノが売れるわけではないことは誰もがわかっていることである。お客様は商品そのものが欲しいというよりも、何らかの必要性(ニーズ)があって、それを満たすことが目的なのであり、その商品によってもたらされるもの(価値)を求めているのである。
洗濯機を例にしよう。最近はドラム式で乾燥機能が付いている商品が主流である。ヒートポンプ方式やイオンコートなど機能も多様であるが、ここに記した商品の特性を聞いただけでは、「それで何ができるの?」と思う人が大半であろう。
「売れない営業は『商品の特性』を『商品の価値』と誤解しており、セールストークがスペックや機能のみを伝える『特性表現』に終始しがちです」(野部氏)
価値とは特性とニーズの重なりの部分である。つまり、価値は本来お客様が決めること。営業にできることは、お客様のニーズを想定し、それに合わせた商品の価値を伝えることである。
「売れている営業マンは自然に『価値表現』ができています」(野部氏)
例えば、商品の持つ特性と想定されるお客様のニーズを幾通りも組み合わせ、商品の価値にまで落とし込んだトーク集を作って営業チームで共有してみてはいかがだろうか。
「商品の価値はお客様に教えてもらうこともよくあります。そのとき、フレーム(型)がないと表面的な理解に終わってしまいがちです」(小松氏)
現場でお客様から教えられた新しい価値をフォーマットに追加し、チームで共有することで「価値表現」の幅はさらに広がることになる。
価値と金額はどう考えればよいのか。
「金額で折り合わず受注に至らなかった」というケースは誰しも経験することだ。では、商品を値下げすれば問題は解決するのだろうか? 答えはNOである。
他社がさらに値引きをしてくれば、値引き合戦になり、収拾がつかなくなるのは避けたいところである。価格を下げずに購入させるためには、価値を上げることになるわけだが、一朝一夕に機能が向上するはずもない。とすれば、価値をお客様に十分伝えられているか、価値を膨らませることができているかがポイント。価格交渉に際しても、魅力的な価値表現のプレゼンテーションができるかが重要なのである。