定期的な運動が健全な精神状態を保つ
健康を維持する要素は、大きく分けると「食事」と「運動」と「生活習慣」です。なかでも重視したいのが運動の習慣づけ。おそらく読者の方の疲れは肉体的疲労ではなく、ほとんどが精神的な疲労です。徹夜での作業とか、たび重なる出張などの疲れもメンタル的な部分が大きい。
メンタル性の疲労を解消する特効薬が運動です。会社や家庭で嫌なことがあったら、ストレスを解消しようと飲んだり食べたり寝たりするのではなく、意識して体を動かしてください。アタマとカラダは密接にリンクしているのです。
健康診断の一番の問題はフィジカルな数値ばかりで、メンタル評価が何もないこと。確かに肉体の数値は生活習慣病の指標になりますが、ココロの持ち方が健康には大きなウエートを占めています。この運動をすれば何カロリー消費するだとか、この食事のカロリーはどれくらいかといったことも大事ですが、実際は精神的なもの、自律神経に関わる要素が非常に大きいのです。
今世紀、企業の経済活動に最も大きく影響する疾患は精神疾患だといわれています。つまり年をとって体を壊して働けなくなる心配よりも、やる気がなくなる「うつ状態」になったり、どうでもよくなる、いわゆる「セルフネグレクト」に陥ってしまったために働けなくなる危険性のほうが高いのです。
年金などの社会システムが崩壊すれば、70代になっても働かざるをえなくなる人も増えるでしょう。するとおそらく世代間の競争が激化し、軋轢も厳しくなり、社会の心理的不健全さも増すと思われます。メンタルのケアの必要性はますます高まりそうです。
私は、老いを「悟り」「枯れた」などと必要以上に美的感覚に置き換えるのは間違いだと思います。若くいようと、がんばりすぎないのがいいのは確かですが、がんばらなくていいというのは違うんじゃないでしょうか。
ちょっと抗いながらも、加齢をポジティブに受け入れる。老化を遅らせるには、安直なようですが、身だしなみに気を使い、オシャレな楽天家を目指すのが一番です。年齢に応じたカッコよさを考えたり、人気者でありたいと思うのは、実はとてもいいことなのです。
工藤一彦(くどう・かずひこ)
1947年、熊本県生まれ。信州大学医学部卒、内科医。著書に『健康常識にダマされるな!誰も教えてくれなかった「通説」のウソ・ホント』(監修)ほか。