【田原】日本の法律サービス市場はまだ伸びるということですね。海外展開は考えていますか。

【元榮】日本はアジアにおけるリーガル先進国。日本で弁護士とユーザーがつながる場所をしっかりと確立できれば、これから経済発展が進んでさまざまな法的問題が出てくるアジア諸国にも輸出していけると考えています。その他、弁護士以外の専門家にも広げたいですね。

【田原】というと?

【元榮】たとえば医師や歯科医師、臨床心理士、獣医の検索データベースがあったら便利だと思いませんか。専門家はインターネットの世界に出ることに積極的ではない傾向もままあるのですが、一方で専門的なサービスを求める人たちはネット上に確実にいます。弁護士ドットコムのモデルを横展開して、そうした人たちをつなぐことができたら、より世の中が便利になると確信しています。

【田原】いいですね。医師を紹介するサービスなどは、すでにあってもよさそうなものだけど。

【元榮】医療は医師法や医薬品医療機器等法の規制もあって、簡単にはできないのです。やるにはきめ細かいサイト設計が必要で、その点でいえば弁護士法をクリアした弁護士ドットコムはノウハウに優位性があると思います。

【田原】わかりました。今後の展開、注目しています。

田原さんへの質問:縮小する日本市場で打つ手はありますか?

【田原】日本の一番の問題は人口減少です。少子化が始まったのは1970年代前半。しかし政府は2000年代まで何もしてこなかった。民主党内閣時代に少子化担当大臣は10人も代わったが、何もやっていないのと同じ。

しかし、解決困難な課題だからこそ、そこに事業のチャンスもあると思う。アンケートによると、日本の女性が産みたい子どもの数は平均2.4人だが、実際の出生率は1.4人。このギャップを埋めることに貢献できる事業は、成長する可能性を秘めている。弁護士ドットコムも、離婚のお手伝いだけでなく、結婚や職場環境の改善などを法律面でサポートしていくことに商機を見出すとおもしろいと思います。

遺言:解決困難な課題こそチャンス

田原総一朗
1934年滋賀県生まれ。県立彦根東高校卒。早稲田大学文学部を卒業後、岩波映画製作所、テレビ東京を経てフリーに。幅広いメディアで評論活動を展開。
(村上 敬=構成 宇佐美雅浩=撮影)
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