「絶頂期だったから、むしろ辞めやすかった」。LINEを5億人が使う世界的アプリに育て上げた立役者は、さらりとそう言った。なぜ辞めたのか。この先、何を目指すのか。田原氏が迫った。

絶頂期のほうが辞めやすい

【田原】森川さんには去年お目にかかりましたが、そのときはまさかLINEをお辞めになるとは思わなかった。あのころから辞めることは考えておられたのですか。

【森川】そうですね。辞めようと思ったのは2013年の末でした。

【田原】13年というと、LINEがどんどん伸びて絶好調の時期。普通、いいときに辞めないでしょう?

C Channel社長 森川 亮氏

【森川】むしろ絶頂期のほうが辞めやすいと思います。世の中、必ず始まりがあれば終わりがあります。終わりのタイミングは、なるべく影響が少ないときがいい。新しく社長になった出澤(剛)はもともとライブドアにいて、堀江貴文さんがいなくなって大変だったときに会社を支えていました。そういう経験を持った人材がいたので、ちょうどいいタイミングで辞めることができました。

【田原】「辞めないでくれ」とは言われなかったですか。

【森川】そういう声もありました。

【田原】引き留められても気持ちは変わらなかった?

【森川】同じ人がずっとトップに居続けるのはいいことではありません。僕は前の会社に12年いて、そのうち社長を8年、LINEに関しても4年やった。そろそろ次の世代へバトンタッチすべきタイミングがきていたと思います。それに僕自身、日本を元気にするような新しいビジネスに挑戦したい気持ちが強かった。それで、辞めるならいまだろうと。

【田原】新しいビジネスならLINEにいてもできるでしょう?

【森川】LINEでは、日本を元気にするプロジェクトをやりにくいのです。グローバル企業は、収益の上がる国にフォーカスするのが基本です。LINEはすでに日本でシェアを取っていて、これからは欧米に注力する必要がありました。私個人が日本を元気にするビジネスをやりたくても、社長として決断できません。

【田原】グローバル企業にはグローバルゆえの難しさがあったのですね。森川さんはこの4月にC CHANNELを立ち上げました。これは何をやる会社ですか。

【森川】C CHANNELのCは、communicationのC。映像でコミュニケーションをするという意味を込めて、この名前をつけました。