専門家を身近に――ネットで弁護士に無料相談できるサービスを立ち上げた元榮氏。弁護士として十分な収入を約束されているのになぜ、あえて起業といういばらの道を選んだのか。
起業したものの4年売り上げなし
【田原】弁護士ドットコムを立ち上げたのはいつですか。
【元榮】05年です。弁護士とネットを組み合わせるというアイデアはあったものの、事業のことはアンダーソン・毛利を退職するまで何も考えていませんでした。何から始めていいのかわからないので、インターネットビジネスや経営の本を買い込んで、渋谷の南平台にあるデニーズへ。それが退職翌日にやったことです。
【田原】そこからどうしました?
【元榮】まず仲間探しです。大学の後輩などに声をかけて、4人で起業しました。それから大前研一さんの起業塾に参加。事業計画コンテストでトップを取り、大前さんにも「専門家とネットでつながるサービスは、これからの時代に絶対必要」と激励をいただきました。
【田原】ただ、最初は壁があってうまくいかなかったと聞きました。どこが難しかったのですか。
【元榮】弁護士法の72条です。弁護士法では、報酬目的で弁護士を斡旋することを禁じています。
【田原】つまり弁護士と利用者をマッチングさせて紹介料を取ることはできない。
【元榮】そうです。そのことはサービスを始める前からわかっていたので、とりあえず無料で始めました。それでも弁護士ドットコムが社会から必要とされてユーザーが増えてくれば、いつか何かの形で収益化できるはず。実際、当時人気があったグリーやミクシィも最初はそうだった。そう考えてサービスを続けました。
【田原】だけど、収益ゼロでどうやって生活するんですか。
【元榮】法律事務所をつくりました。弁護士ドットコムは長期的視点で育てていればいい。そのぶん弁護士として求められている仕事で経営基盤をつくろうというわけです。