専門家を身近に――ネットで弁護士に無料相談できるサービスを立ち上げた元榮氏。弁護士として十分な収入を約束されているのになぜ、あえて起業といういばらの道を選んだのか。

時代は「駆けつけ弁護」へ

【田原】御社は2014年12月に上場したばかり。弁護士ドットコムは、どのようなサービスですか。

弁護士ドットコム社長 元榮太一郎氏

【元榮】インターネット上で弁護士に無料で相談できるサイトです。いま登録している弁護士は8000人超。回答は相談者から評価され、回答を投稿した早さや内容などをもとに、アルゴリズムを通してランキング表示されます。弁護士を探せる検索データベースにもなっていて、いろいろと条件を絞り込めば自分に合った弁護士を探せる。「食べログ」という口コミグルメサイトがありますが、その弁護士版をイメージしていただければわかりやすいかと思います。

【田原】自分に合った弁護士ってどういうことですか。

【元榮】離婚で悩んでいる女性がいるとします。自分が女性だから女性の弁護士がいいとか、年齢は40代がいいとか、子連れで相談に行きたいから託児所があるところがいいというように自分が望む条件をチェックボックスに入れると、それらを満たした弁護士の情報が出てきます。

【田原】弁護士は敷居が高いというイメージがあります。だから利用者からすると、気軽に弁護士を探せるサイトは便利だと思う。ただ、弁護士がわざわざこのサイトに登録する理由がわからない。弁護士って、仕事に困ってないでしょう?

【元榮】もちろん困っている方ばかりではないのですが、司法制度改革が行われて、弁護士数は大幅に増えました。私が弁護士登録した01年は1万7000人でしたが、13年には3万5000人になった。弁護士数が2倍になれば競争も2倍。一見さんお断りだった弁護士の世界にも、インターネットを通じてまだ見ぬユーザーとつながろうという意識が急速に広がってきているのです。

【田原】なるほど。ネットで弁護士が探せるようになると、弁護士とのつきあい方も変わってきそうですね。

【元榮】最近、興味深い事例がありました。今年のお正月、歌舞伎町で起きた話です。あるグループが客引きに誘われて入った店で高額請求を受けました。払えないと拒んだら、屈強な店員が登場。いわゆるぼったくりバーです。しかし、お客のうちの一人が弁護士ドットコムを使ってその場で弁護士を見つけて連絡。すぐ駆けつけてくれて、妥当な料金で話をつけてくれたそうです。

【田原】すごいですね。

【元榮】僕は弁護士ドットコムが普及することで、訪問医療や訪問介護のように自宅に弁護士がうかがう「訪問弁護」が広がったらいいなと考えていました。だけど時代はもっと先を行っていて、現場にすぐ駆けつける「駆けつけ弁護」が事例として出てきた。弁護士という存在が、本当に身近になってきたのだと思います。