こうして政治の過度の介入を呼び込み、自浄作用のシステムが壊れた結果、閉じたヒエラルキーの中で一気に腐敗が進み、日本の裁判は大きく劣化した。
01年という年は、内部にいた私から見て、こうした構造的な腐敗が始まった時期と符合する。この頃の裁判所は、すでに経済界も含めた権力に唯々諾々と従い、名誉毀損も原発も行政訴訟も冤罪も、おかしな判決を量産し続けた。
根本的な司法改革を行うには、弁護士経験者または法曹経験者から裁判官や検察官を任用する「法曹一元制」を導入するしかない、と私は考えている。すぐには無理でも、せめて裁判官の2割か2割5分を弁護士から採用し、5年程度の交代制で一生懸命いい裁判をするようになれば、少しは状況が変わってくるだろう。そういう風穴を開けなければ、裁判所はひどくなる一方である。
世の中の最後の警報装置である司法が一新されれば、必ず世の中の暴走にブレーキがかかる。その警報を自民党が押さえ込もうと必死になった結果がこの体たらくである。警報装置のスイッチが切られたり機能不全を起こせば、火事が起きても誰も感知できなくなってしまうのだ。
(構成=藤野光太郎 図版作成=平良 徹)