婚姻数も新設住宅着工件数も減少していく

結婚や住宅購入は、クロスセリングによる家具小売りの回転率向上の大きな機会である。しかし少子高齢化の進む日本では、2000年以降には婚姻数も新設住宅着工件数も減少していく(図4、5)。

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(4)国内の婚姻数の推移(5)新設住宅着工件数

大塚家具とニトリの収益性に逆転が生じたのも、実はこの00年以降なのである。

回転率を高めることは、小売りの収益性向上の基本路線である。しかし、結婚や住宅購入が頭打ちとなれば、クロスセリングによる家具小売りの高い回転率には限界が生じる。その中で高い収益性を維持するには、利幅の管理が重要となる。

ここでもまた、ニトリが取り組んできた垂直統合がものをいう。ニトリは生産段階に踏み込み、原材料の手当てや検品・品質管理の徹底に取り組み、原価を引き下げることで利幅の改善を促してきた。もちろん、安価な輸入家具の仕入れを増やしたり、工場との直接取引を行ったりすることも、高い収益性に貢献する。だが、それらに加えて生産段階に踏み込むことができれば、収益性はさらに高まる。

ニトリが、当初は品質が不安定だった海外自社生産家具の改善の目処をつけたのは、00年頃である。それ以降、ニトリの売上高営業利益率は大きく上昇していく。

今の日本において家具小売りの高収益化を図るには、結婚や住宅購入などのライフイベントを契機とした購買に、もはや頼ってはいられない。

都市部出店も進む。ライフイベント型の顧客であれば、充実した品ぞろえに引かれて臨海部や郊外の大型店舗に足を運ぶ。しかし、家具の買い足しに気楽に立ち寄るには不便な立地だ。こうした日常購買型の顧客に来てもらうには、都心店舗がよい。しかし、都心部の不動産賃料は高い。そこに広い店舗面積を確保しようとすれば、収益が圧迫される。