統一感のある住空間を誰でもコーディネート
大塚家具とニトリは、取り扱う商品のグレードや価格帯が異なり、直接顧客を奪い合う関係にはない。だが、家具小売りとして両社が直面してきた市場の変化には、共通点が多い。その中で、なぜ両社の収益性に大きな違いが生じたのだろうか。
家具は、食料品や日用品のように頻繁に購入する商品ではない。しかし家具店には、来店頻度は低くても、一度に大きな買い上げを期待できる顧客が存在する。結婚や住宅購入などを契機に、各種の家具を買いそろえようとしている人たちである。
大塚家具はこうした顧客に向けて、様々なジャンル、スタイルの家具を豊富に取りそろえ、売り場をまたいで一人の販売員が住空間をトータルに提案するという販売方法を採ってきた。商品知識に裏付けられた助言や説明は、大塚家具が創業期から守り続けてきたアプローチであり、よい家具は顧客に価値を理解してもらえれば、多少高価であっても買い上げてもらえるとの体験と信念に支えられている。このクロスセリング(複数商品の同時販売)を導くコンサルティング・サービスで、かつての大塚家具は効率的に売り上げを高めていた。
一方のニトリは、クロスセリングの仕掛けを別のところで確立している。トータルコーディネーションに取り組んでいるニトリは、共同開発や自社生産によるPB商品を主力とする製造小売り(SPA)の企業であり、価格が安く、しかも統一感のある住空間を誰でもコーディネートできる商品を取りそろえることで、関連購買を促している。
とはいえソファ、リビングボード、収納家具、ベッド、カーペット、カーテン、さらには寝装品といった家具やホームファッションを、異なる産地やメーカーから調達するだけでは、色、素材、サイズ、デザインなどが食い違ってしまう。しかし、これらすべてを自社生産しているわけではないのに、ニトリは統一感のある品ぞろえを実現している。これは、東南アジアに自社工場を開設し、苦労を重ねて現地生産に挑戦してきたからである。そこで獲得した生産面の知識やノウハウを協力工場への発注に活かすことで、ニトリはリーズナブルでありながら統一感のある品ぞろえを実現し、クロスセリングを導いている。