このジレンマから抜け出すにも、ニトリの事業ドメイン(領域)が有利である。ニトリは自らの事業ドメインをホームファニシングストアと定め、その下で事業を水平展開してきた。ホームファニシングストアとは、各種の家具に加えて、カーペット、カーテン、寝装品、食器などのホームファッションについても幅広く提供する小売りフォーマットである。ニトリの都心部出店では、このホームファッションを中心とした品ぞろえ展開が可能である。ホームファッションに絞れば、店舗の小型化が可能となるとともに、リピート購買による回転率の向上も見込める。

大塚家具も、近年は都心部への出店を進めている。確かに都心立地であれば、多くの人に気楽に立ち寄ってもらうことができる。しかし、日常の家具の買い替えや買い足しではまとめ買いは期待できないし、購買頻度も低い。家具主体の都心店舗では、収支を合わす以上の展開を広く見込むことは難しいと思われる。

大塚家具とニトリは、婚姻数や新設住宅着工件数の減少という共通の市場変化に直面してきた。しかしこの変化の中で、両社の収益性は大きく異なる展開を見せた。この適応力の違いは、両社の事業の水平展開、垂直統合の違いから生じている。ビジネスモデルの重要さを改めて考えさせられる。

(大橋昭一=図版作成)
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