住民基本台帳人口移動報告によると、都道府県間を越えた移住者はここ10年以上減り続けており、移動率(人口に対する移住者の率)も低下し続けている。この手の統計における「移住者」の増減というのは要するに進学や就職による若者の人口移動のことを指し、そして若者たちが口にする〈ここではないどこか〉というのは大抵「東京」のことだ。若者人口自体が減っていることを考えても、やっぱり「上京」というものの概念が、少しずつ変わってきているのかもしれない。

基礎文献として押さえておきたいのが、『ファスト風土化する日本』だろう。電車通勤を繰り返す都市生活者はなかなか実感することがないが、国内の郊外の風景はこの10年で急速に画一化されている。ロードサイドのユニクロやマクドナルド、ブックオフ、そしてジャスコ──。規制緩和がもたらした消費環境の整備は、地方の風景を「田舎」から「郊外」に変貌させ、その変化が同時にコミュニティの凝集性の低下をもたらした。「(温かくて不自由な)田舎」から「(冷たくて自由な)郊外」へ──少なくともこの環境下においては、田舎の抑圧的な人間関係と消費環境の劣悪さを嫌って東京を目指す、という従来の「上京物語」は成立しづらくなる。そう、変わったのは「東京」ではなく「地方」の側なのだ。だから現代の「上京」を考えるときに必要なのは「東京」ではなく「地方」を考えることだ。