書かなければ書く力はつかない

【三宅】新聞の見出しは特徴がありますね。

【大門】わかりづらいところがあるかもしれませんね。ルールはいくつかあります。たとえば「be動詞」は使いません。省略しています。また、未来を表すのに、「will」を使わず、「to +動詞」としています。

【三宅】そういうルールを知っているだけでも、読みやすくなりそうです。

【大門】見出し自体、おもしろいですよ。短いスペースで、その記事の要点を簡潔に伝えるにはどうしたらいいか。私たちはいろいろな「置き換え」もしています。

たとえば、「合意に達する」は、普通は「agreement」を使うところですが、アルファベット9文字の長い単語なので、代わりに「ink」を用いたりします。「サインした」という意味の「ink」だと3文字で済みます。「ink trade pact」とあれば、貿易の条約を結んだとなるわけです。「sign agreement」だと、スペースに納まらないかもしれない。

【三宅】実は私は学生時代に、英字新聞を購読したこともあるのですが長続きしなかった(笑)。このような挫折経験は、多くの英語学習者にあると思います。

【大門】私も、実は、学生時代に挫折したことがあります。毎日、山積みとなる新聞を前に、「読まなきゃいけない」というちょっとした恐怖心が出てきます。

でも全部を読まなくていいのです。自分の興味のある分野だけを読む。たとえば教育なら教育、政治なら政治、経済なら経済と。あとは、記事の最初から2つのパラグラフだけでもいいですから、目を通してください。そこに「何がニュースなのか」という要点がつまっています。その後のパラグラフは、ニュースの背景などが書かれている場合が多いのです。

忙しいときは、見出しと記事の2パラグラフだけを読む。おもしろそうな記事や興味のある記事だけを読む。これで挫折はしません(笑)。日本語の新聞も、全ての記事を最初から最後まで読んでいる人は、そう多くはないでしょう。

【三宅】記者として英文記事を「書く力」はどのようにして磨くのですか?

【大門】やはり何度も書くしかない。新人のころは、先輩に直されたものを、何がよくなかったのだろうか、と毎日おさらいしていました。「書く力」のある人は、たくさん書いてきた人だと思います。

【三宅】「しっかり読まないと、書く力は上がらない」といった意見を耳にすることもあります。

【大門】読むだけでなく、同時にアウトプット、つまり書かなければ書く力はつかないと思います。読書で単語や知識を学んだなら、まず使ってみる。そうするとその表現や単語が自分のものになります。ちょっとした短文、きょう何をしたかを書くだけでもいい。