死ぬまで、ラグビー
でも大学の指導者であれば、そこに人間作りも入ってくるだろう。だから春口さんは学生にディシプリン(規律)を求め、生活態度、練習態度にもうるさかった。「まじめな選手じゃなかったら、ラグビーは絶対、うまくならない」と言っていた。
そういった意味では、2007年の部員の不祥事はつらかっただろう。悔しかっただろう。あの時、春口さんは「もっとも好きなラグビーを裏切った」と会見で涙を流し、監督を引責辞任した。
一昨年、リーグ戦2部に転落していたラグビー部再建のため、監督復帰したが、シーズン終了後、成績不振を理由に解任された。ひどい人事だったと思う。
でも、トータルでは、大好きなラグビーに没頭できた恵まれた40年間だったに違いない。退職パーティーの席上、春口さんの顔には、“やり切った感”がにじむ。「ほんと満足のいく40年間だった」と漏らした。
「ワタクシ、これから毎日サンデーです。ノーサイド、ここからまた、始まるね。アフターマッチファンクションを楽しみたい。死ぬまで、僕はラグビーをします」
心配は健康面か。春口ラグビーのレガシーとは無数の仲間であり、ラグビーをまじめに楽しむ文化である。
松瀬 学(まつせ・まなぶ)●ノンフィクションライター。1960年、長崎県生まれ。早稲田大学ではラグビー部に所属。83年、同大卒業後、共同通信社に入社。運動部記者として、プロ野球、大相撲、オリンピックなどの取材を担当。96年から4年間はニューヨーク勤務。02年に同社退社後、ノンフィクション作家に。日本文藝家協会会員。著書に『汚れた金メダル』(文藝春秋)、『なぜ東京五輪招致は成功したのか?』(扶桑社新書)、『一流コーチのコトバ』(プレジデント社)など多数。2015年4月より、早稲田大学大学院修士課程に在学中。