それぞれの地域で愛される存在を目指す
【竹内】最後に、これから御社への就職を希望している採用予備軍の人たちも含め、将来の御社を担う人たちに、金子社長はどんな想いを持って働いてほしいとお考えですか。
【金子】はじめからやりたい仕事が明確でその仕事に就ける人は、ほとんどいないと思います。大多数の人は、たまたま巡り合った仕事に向き合う中で働く意味を見出していくのではないでしょうか。仕事に矛盾はつきものです。大切なのは、目の前の仕事の困難から逃げずに仲間と一緒に乗り越えていくこと。そうする中で人間力を高めていくことができるのです。それが人生なのです。
私が全国の拠点をまわって常に話していることがあります。それは「その地域のお客様のことを第一に考えてほしい」ということです。たとえば盛岡のお店なら盛岡のことを、富山のお店なら富山のことを考えてほしいのです。九州のアイ・ケイ・ケイのことではありません。私が先代から経営を継いだ時、伊万里で最高のおもてなしができる場所として地元の人たちから愛される結婚式場をつくりたいと思いました。お店を出したそれぞれの地域で愛される存在になりたい。それは将来世界へ展開するようになったとしても同じです。
【竹内】矛盾と向き合い乗り越えていくことを通じ、仲間と共に人として成長していくことに仕事の意味があり、進出先の地域で愛され続けてこそ企業としての存在意義がある。理念の実現こそ仕事そのもの、ということですね。本日は貴重なお話を聞かせて頂き、ありがとうございました。
次回は本事例の総括として、アイ・ケイ・ケイの事例から学べることをまとめてみたい。
竹内秀太郎(たけうち・しゅうたろう)●グロービス経営大学院主席研究員。東京都出身。一橋大学社会学部卒業。London Business School ADP修了。外資系石油会社にて、人事部、財務部、経営企画部等で、経営管理業務を幅広く経験。日本経済研究センターにて、世界経済長期予測プロジェクトに参画。グロービスでは、人材開発・組織変革コンサルタント、部門経営管理統括リーダーを経て、現在ファカルティ本部で研究、教育活動に従事。リーダーシップ領域の講師として、年間のべ1000名超のビジネスリーダーとのセッションに関与している。Center for Creative Leadership認定360 Feedback Facilitator。共著書に『MBA人材マネジメント』『新版グロービスMBAリーダーシップ』(ダイヤモンド社)がある。GLOBIS知見録にて『変節点に見る理念経営』を連載中。>> http://globis.jp/column_series/column-46/