発電事業で予想以上の成果を出した理由

その意味では、環境対応型発電事業というのは時流を掴んだものだと考えていい。発電のノウハウは東京ガスが有しており、燃料の調達は我々の得意分野である。両者の事業領域と資産が無理なく生かせる、相性のいいビジネスモデルだと判断した。PPS(特定規模電気事業者)方式の発電所として、03年8月に東京ガス75%、昭和シェル石油25%の出資で会社を設立した。そして、05年3月に専務取締役に就いた私が、発電プロジェクトを担当したのである。

ただし、事業を取り巻く環境は常に変化している。アラスカから輸入するはずだったLNGが当初の見込みどおりには入らないことがわかった。そこで、ブルネイやオーストラリアなどからもLNGを運んだ。そんなこともあって、環境アセスメント評価の手続きは120万キロワットで完了していたが、07年の着工は1号機と2号機の80万キロワットに絞り込んだ。これこそが、その時点での状況を把握しての着手小局に他ならない。

発電事業は幸い1年目から黒字化できた。不慣れな現場で働いてくれた社員1人ひとりが見事な適応力を見せてくれたことに対しては、いまさらながら感謝にたえない。石油という商材は目に見え、ストックもできるが、電気は違う。不可視で、需要と供給を絶えず一致させる必要がある。しかも、販売に際しては常時同一価格ではなく、時間帯によって変動する。それにもかかわらず、営業担当者はピーク時の価格で購入するユーザーを見つけて売り込んでくれた。発電事業が思った以上のスピードで、予想以上の成果を上げた裏には彼らの頑張りがある。

現在、日本国内は東日本大震災後の原子力発電所の全面停止で電力需要の逼迫が社会問題化した。いまは表面的には安定しているようだが、この様な時期に発電の一端を担えることにエネルギー会社として手応えを感じる。今後、京浜製油所扇町工場跡地でのバイオマス発電もスタートする。こうした分野は日本再生のバイタリティにもなりうると考えている。

香藤繁常(かとう・しげや)
1947年、広島県生まれ。県立広島観音高校、中央大学法学部卒。70年シェル石油(現昭和シェル石油)入社。2001年取締役。常務、専務を経て、06年代表取締役副会長。09年会長。13年3月よりグループCEO兼務。
(岡村繁雄=構成)
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