知られざる日本の電力の質の高さ
日本における再生可能エネルギーの年間発電量はまだまだ少ない。資源エネルギー庁がまとめた「電源開発の概要」によると、2013年ベースで、全発電量に占める割合は、水力を除くとわずか2.2%にすぎない。とはいえ、環境に優しく、国内で自給できるというメリットを考えれば、着実に伸ばしていくことが必要な電力だといえる。そして、再生可能エネルギー固定価格買取制度(FIT)導入後は、太陽光発電が再エネの9割以上を占める状況となっている。しかし、太陽光や風力には気象条件に左右されるという問題がつきまとう。
電力中央研究所の朝野賢司主任研究員はこう問題点を指摘する。
「日照や風況によっては安定的な発電出力が確保できないという問題があります。例えば、ある電力会社の管内が雨や曇りだと十二分な発電は見込めない。確かに複数の地点の発電量を合わせて単独運転での変動を緩和する“ならし効果”も確認されていて、それなりの出力としてある程度計算はできます。しかし、火力などによるバックアップ電源を用意しなければなりません。加えて、再エネにはこれ以外にも、解決すべき技術的課題がたくさんあります」
まず、安定性の問題とも密接に関連するのだが、急激な出力変動に対する周波数調整力の確保だ。電力会社から送られてくる電気は交流で、プラスとマイナスの極性が交互に変わる。東日本では1秒間50回(50ヘルツ)、西日本では60回(60ヘルツ)に決められている。電気が安定的に供給されることで、工場のモーターや制御装置などが動くわけだが、これらに影響がでないよう、電力会社は調整目標の±0.2~0.3ヘルツ内となるよう発電所の出力を調整している。
国の調査によると周波数の変動による影響として、「巻き取り速度の変化により、糸切れの発生や糸の太さ等の品質に影響(化学繊維製造業)」「分解・脱硫する圧力制御に影響が生じ、不純物が除去されない(石油業界)」「圧延工程に不具合が発生し、製品の厚さにムラが発生(鉄鋼業界、アルミニウム業界)」などの懸念が報告されている。
つまり、電力の安定や電力の質が確保されないと、製品の品質が落ちるという。これは“ものづくり立国”を誇る日本にとっての死活問題となりかねない。