リーダーシップ――部下を前向きにさせるためのヒント

■読者に自問を促す小説集

『小説 日本婦道記』
  山本周五郎/新潮文庫

周五郎初期の代表作。武門の女性たちが、夫や息子や主人のために心を尽くすさまを描いている。「糸車」のほか、中井氏が特に心を動かされたのは「23年」という。彼女らは決まって、相手に気取らせぬよう、ひそかなやり方で主人を助ける。女性に限らず、自分にもそういうことをしてくれた人がなかったか、読者に自問を促す小説である。

■改めて読む小学生の道徳

『国民の修身』
  渡部昇一・監修/産経新聞出版

戦前の小学生が読んでいた道徳の教科書を復刻した。敗戦後の伝統否定の流れにより、教育現場では長く「修身」という言葉じたいがタブーだった。しかし、ここにあるのは「早起きをしよう」「弱いものいじめをするな」といった、古今に通じる普遍の倫理。まずリーダー自身がこれを読み、「できているだろうか」と自問自答してはどうかと中井氏はいう。

■王道を行けば誰かが見ている

『海賊とよばれた男』
  百田尚樹/講談社

明治末期に創業し、独立独歩の精神と家族主義経営で大を為した「国岡商店」。戦後、どん底から再起するさまが感動的だ。誰もやりたがらない汚れ仕事を国のために引き受け、しかも結果的には損を蒙ってしまう。だが、そのことが信用となり、国岡は各方面に味方を得る。王道を行けば誰かが見ている。選択に迷ったとき、勇気を与えてくれる本である。

■リーダーの悩みへ名回答

『社員を幸せにしたい 社長の教科書』
  中井政嗣/日本実業出版社

リーダーシップに関して、全国の中小企業経営者から寄せられたリアルな「悩み」に中井氏が答える。夫の急逝で会社を継ぐことになった40代の女性経営者、2代目の“暴走”に悩む老会長、モンスター客への対応に悩む小売業者……。相手の身に寄り添いながらも、至らざるところを指摘し、気づきを与える。その呼吸が絶妙で、深く納得させられる。

(面澤淳市=構成 浮田輝雄=撮影)
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