当然、担当部門の抵抗は強い。こういうときの対応が、大切だ。「うるさい、いいから聞け」とか「嫌なら、辞めていい」というような口ぶりは、絶対に避ける。上下関係は脇に置き、まずは相手を信頼し、言い分に耳を傾け、どうすればいいかの案を聞く。個人は責めず、すべての部門を対象として、例外はつくらない。

だいたいは、本当は「どうすればいいか」の答えは、すでに持っている。でも、それはしまっておく。「自分たちの話を、きちんと聞いてくれる」「議論をしたうえで決定する」という過程を経てこそ、相手の信頼感を得ることができる。相互信頼がなくては、本物の改善はできない。おカネで解決できる問題なら簡単だが、何でそんな製品が出たのか、なぜ問題を放置したのかとなると、ていねいに過程を踏む必要がある。

ピオリアでは、試作車まで売っていた。1台が3、4億円もするから、売り上げにしたい。でも、それでは不具合の苦情がきても、設計部隊に実態を確認できるものがない。やむを得ず、お客のところまでいってチェックしていたから、改善は遅れる。設計標準のずれや使用条件の説明不足など、問題点の改善も、手元に1台持ってさえいれば、早くできていた。当然、「おカネは何とかするから、1台は手元におけ」と指示する。

社長に就任した04年1月、ピオリア通いを毎月1度ほどに減らした。「みえる化」が、軌道に乗っていた。代わりに翌月、「プロジェクトM」を開始する。「M」は鉱山機械の頭文字。製品の品質と信頼性を向上させる活動で、新機種の開発段階から生産部門も合流して、相互にチェックする。生産現場での改善の成果を、試作品に反映させた。